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障がいのある人が地域で生き生きと安心して暮らしていくためには、社会における障がいへの理解の促進を図るとともに、医療や教育、就労など、さまざまな分野にわたる総合的な支援が必要です。
そこで、多様な側面から障がい者支援に取り組む団体の皆様に、活動の経緯やその内容をお聞きしました。
障がい者と聞くと、どのようなイメージが浮かぶでしょうか。
法律によると、障がいには「身体障がい・知的障がい・精神障がい、その他の心身の機能の障がい(高次脳機能障がい、難病)」があると定義されています。
つまり、障がいといっても、その種類はさまざまです。
2016年4月には、障がいのある人もない人も分け隔てなく尊重し合いながら共生し、障がいを理由とする差別の解消を推進する「障害者差別解消法」が施行されました。
こうした流れもあり、誰もが当たり前に暮らせる社会づくりをめざす「ノーマライゼーション」の理念は、障がい者支援の基本的な考え方として定着が進んでいます。
しかし現実には、すべての人が障がいを十分に理解しているとはまだまだ言えない状況です。
また、障がい者の支援制度においても、多様なニーズにきめ細かく対応できていない面もあります。
インターネットでつなぐ障がい児の遠隔教育支援
そうした制度の隙間を埋めるひとつが、信州大学病院の一角を拠点に、難病患者やその家族に向けた総合的な支援事業を展開している「e-MADO」のインターネットを活用した無料の絵本読み聞かせです。
もともと、取り組みのひとつとして、無菌病室で長期入院している子どもと家や院内学級を映像通信技術でつなぎ、子どもの精神的ストレス解消を図る事業を行っていましたが、この技術を活用し、在宅医療や入院中で通園・通学ができない幼児・児童にも教育の機会を与えることができないかと考え、辿り着いたのがインターネットの利用でした。
まず行ったのが、遠隔Web会議のシステムと2台のパソコンを使い、養護学校での勤務経験をもつスタッフと在宅の幼児をつなぐ絵本の読み聞かせです。
その幼児のひとりは、養護学校がない小笠原諸島母島で暮らすアテトーゼ型脳性麻痺の男児。読み聞かせ以外にも、折り紙や粘土などの遊びから握力を培うなどの工夫をし、さらに画面を通じて遊ぶことで距離の隔たりを感じない活動ができました。
また、この支援を通じ、看護で家に閉じこもりがちな子どもの親にとっては、話し相手ができることで精神的な支えにもなる相乗効果も見られました。
ここからさらに発展し、最近はWi-Fi(無線LAN)が使えない中信松本病院の小児科病棟でも、タブレット端末2台を無料貸与し、LTE(従来の携帯電話の電波)を使った入院児童への絵本の読み聞かせ支援を開始しています。
精神障がい者の社会参加を促し病気の理解を促進
他方、精神障がいの支援に取り組んでいるのが、松本市の「てくてく」です。
代表の桑原美由紀さんは祖父の精神障がいをきっかけに、もっと病気を理解したいとボランティアを始め、精神障がい者が周囲から「怖い」という印象を抱かれがちなのは病気への理解がないためだと実感しました。
そこで、当初は自宅を開放して障がい者に憩いの場を提供していましたが、市民の日常生活の延長に障がい者と関わる施設があれば理解が進むのではないかと考え、無添加の焼き菓子とクラフト作品を製造・販売するカフェギャラリーの営業を開始。
真摯な取り組みが実を結び、焼き菓子は「森のお菓子コンテスト」最優秀賞を受賞して、松本食品衛生協会優秀店に認定されています。
また、ワゴンカーでの出張販売も行い、積極的に障がい者の社会参加を促進しています。
「活動を続けることで社会への啓蒙を図り、施設を利用している障がい者に対しては、ここを自己表現の場と捉え、社会参加への自信につなげてほしい」というのが桑原さんの思いです。
しかし、どちらの団体も、まずは社会に活動を理解され、周知されることが支援の第一歩だと話します。
特に「e-MADO」の場合、在宅での治療により外部からの教育支援が必要な幼児は少なくありませんが、個人情報という壁もあって、なかなか見つけることができません。
また、精神障がいの支援も家族の理解がなく、いつのまにか本人が社会から孤立し、支援の対象から外れてしまう場合もあります。
まずは知ってもらうこと。福祉支援の豊かな発展は、地域社会の活性化にもつながります。
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