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長野県みらい基金を設立して4年がたちますが、現在は登録160団体のうち57団体が子ども支援をしている団体です。今年9月で、県民から計1200万円が子ども支援の団体に寄付されていますが、もっと子ども支援に力を入れようと、こうして今日皆さんにお集まりいただきました。さまざまな分野の方々の考えや思いをお話しいただき、県民にも関心を持って自分の立場で子ども支援ができるようになってもらえたらいいと考えています。
今回は長野県みらい基金座談会として、さまざまな分野から子ども支援に尽力されている皆さまをパネリストにお迎えして、長野県の子ども支援の「いま」と「これから」について女性目線でディスカッションをしていただきました。
「子どもの居場所」をキーワードに、大人や社会も変わっていくような場づくり
- 長野県中にはたくさんの資源や可能性があって、子どもの力になりたいと思っている人が学べる場や、子どもを応援しようと思っている人たちの居場所も必要と思っています。
中島さん
今、県では「こどもの居場所・信州こどもカフェ」をキーワードに、子どもや高齢者という縦割りではなく横串で、結果として子どもの居場所作りが広がるようなプラットフォームをつくることにしています。
子どもを支援する大人や社会も変わっていくような場づくりにしたいと思っています。そういう場にすれば、皆さんが集まってくるのでしょうか。
山浦さん
今日、初めて知ったことがたくさんあり、知ればやろうよとなりそうなので、もう少し広報しなければいけないと思います。私は先日、不登校の生徒が通う中間教室を見学しました。中間教室の先生方同士で戸枝さんたちと話をしていただいたら、もっとよくなっていくのではないでしょうか。私もできるなら応援してみたい。もう少し何とかしてあげたいと思いました。
戸枝さん
長野市には、不登校の親の会、子どもたちの居場所を30年近くやっているグループがあります。すごいなと思います。県下各地でそういう活動をしている人たちのネットワークが「ながの不登校を考える県民の会」です。
中島さん
そういう活動をしている人だけでなく、異業種でうまく出会える機会がつくれるといいと思っています。
- 「こども食堂」のように、みんなで食事をつくって食べようという場に不登校の子も少しずつ参加し、順番に社会に出ていくステップをつくってゆく。そういうつながりの中に商工会議所の方やいろいろな方が手伝いに来てくれるといいですね
山浦さん
シニアの方だっていいですよね。
戸田さん
実際は活動している側から行政に声掛けをしても、なかなか振り向いてもらえないのが現状です。中間支援のような組織が声を掛けると、商工会も行政も同じテーブルに着くことができます。多様な人と出会う今日のような場が欲しい、でも自分たちの力だけでは…というのが難しいところです。
戸枝さん
学校でも、私たちがいろいろな体験の話をする時に先生に来てもらいたいと思っても、部活などがあって難しいのが現状です。
- 活動資金が無いため、私たちと一緒に資金集めをしたり、絵本を作ったりしている方がいますが、その背景は、いろいろな人に活動を知ってもらいたいという思いなのではないでしょうか。応援してくれる人が増えることで、資金面以外の部分でも楽になるということなのではないかと思います。
山浦さん
活動を知ることで、場所を提供できる人も出てくるかもしれません。
中島さん
中間支援団体が地域のさまざまな関係者が出会う場所をつくるのがよいのではないでしょうか。お金だけでなく人的・物的なサポートのマッチングができるといいですね。
戸田さん
私もかつて企業側からCSRで社会貢献の相談を受けることも多くありました。資金面も踏まえて、その企業ならではの社会貢献をやるのがいいと思っています。例えば、子ども支援の場所として事業所の 一角を提供するということでも。
長野市には昼間は高齢者の介護センター、 夕方は子どもに向けた居場所づくり(無料学習支援塾)に取り組んでいる所もあります。そこにはコーディネーター役の職員、シニアや学生がボランティアで関わっています。
最近では、昼間は宅老所、夜は貧困の子はもちろん地域の子どもは誰でも夕飯を食べにいける場所が立ち上がりました。人が集まるには、まず場が必要であるということに少し力を入れていくといいアイデアが出てくるのではないでしょうか。
子どもが気楽に来ることができる場づくり
- 宅老所は民間施設なので、フットワークが軽いですよね。その施設の近くにある保育所に、「帰り際にご飯を食べていってください」とチラシを貼ったところ、延長保育で帰りが遅くなった親子が利用するようになったそうです。このように地域ごとの工夫で活動が始まっていることを知れば、「私もやりたい」という人が出てくると思っています。
山浦さん
商工会議所の女性たちは「何かをしようよ」と話していますが、これならできますよね。
中島さん
これから始めたい人も、こうした活動を展開しているところにお手伝いに行くことから始めることで新たな取組みにつながっていくのではないでしょうか。
社会資源はどこに
- 長野にはお寺で始めているところもありますし、視点を変えると全て社会資源になります。お母さんたちのつながりは「私たちに任せて」というような形でつながっていけばいいということですよね。
戸枝さん
私は今年、生涯学習コーディネーターの資格を取りました。不登校やひきこもりの子どもたちと生涯学習のシニアが一緒に学ぶような形が取れるといいなと思っています。それと、地域課題や課題に絡めた自立支援もしたいとも思います。
戸田さん
長野市社協にいた頃、特別支援学校の先生から相談を受けたことがありました。学校では生徒のコミュニケーション力を付けるために老人福祉センターの講座で大人の講座を受けるプログラムと連携し、実習を続けています。学校で付く力と外で多様な人と出会うことで付く力は異なりますし、受け入れる側の高齢者の皆さんが彼らを知る機会にもなっています。そうした小さな単位で多様な経験ができていけばいいと思いますし、小さいけれどいくつもある事業のどこかに子どもたちが関わっていくのが理想かなと思っています。
戸枝さん
例えば、ぷれジョブ(障害のある子もそうでない子も一緒に生きていくことができる地域社会を共に創る活動)も今ある地域の資源を活かしてシニアの皆さんと一緒に実施できたらいいなと思います。私たちのカフェは日曜日が定休日なので、その日に特別支援の子どもたちがお店を開き、地域の人たちに食事を提供したり交流できたら楽しいだろうなと空想しています。
<参加者>
長野県副知事
中島 恵理さん
副知事の中島です。担当業務の一つが子ども支援です。自分自身も子育て世代である経験も踏まえながら、子ども支援に関係する部署間の連携を図りながらよりよい施策作りに取り組み、今年は子どもの貧困対策の計画をつくりました。さらに子ども支援の強化に取り組んでいきたいと思っています。
ハイブリッド・ジャパン株式会社代表取締役/ライオンズクラブ334-E地区 地区FWTコーディネーター
山浦 悦子さん
私はライオンズクラブに入会して20数年になります。クラブでは子どもたちの支援事業に力を入れていて、これから子どもたちの居場所づくりを企業と一緒に計画するところです。今日は皆さんのお知恵をお借りしたいと思っています。
NPO法人 子ども・若者サポートはみんぐ 事務局長
戸枝 智子さん
伊那市の「NPO法人子ども・若者 サポートはみんぐ」事務局長と、「ながの不登校を考える県民の会」の事務局をしています。私自身、長男が4歳の時に保育園に行けなくなり、母親たちが自主運営する松本市の子育てサークルに入会し、3年間活動したことが現在の活動につながっています。
官民協働事業「上伊那子どもサポートセンター」ができ、当事者や不登校に苦しむ子どもたちの声を行政に届ける手段が生まれると思いました。わが子の不登校体験やさまざまな支援活動から学んだことを社会に還元したいと思っています。今回の座談会はよい機会をいただいたと思っています。
公益財団法人 長野県長寿社会開発センター 主任シニア活動推進コーディネーター
戸田 千登美さん
私は3年前から「長野県長寿社会開発センター」でシニア活動推進コーディネーターとして、シニアの社会参加(人生二毛作)の推進をしています。
その一つのシニア大学事業は、今は2400~2500人で60~92歳のシニアの学生が学んでいます。学生たちは皆、その知識を社会に生かそうとしています。また、シニアを求める側と何かをしたいシニアが出会い、意識啓発をするような場づくりを3年前から始めています。戸枝さんのような現場の状況や思いを話してくれる人とシニア層が直接出会う場をつくり、現場を見せていくことで児童虐待や不登校について知っていただくよう心掛けています。
認定NPO法人 長野県みらい基金 理事長
髙橋 潤
コーディネート・ 司会進行